今回はランクバトルの適切なHP調整について解説していきます。
HP調整とは?
HP調整とは、ポケモンの努力値を調整することでHP実数値を特定の値にする調整のことを指します。奇数調整や16n-1調整などが有名ですね。
HPを調整することによって、定数ダメージを減らしたり食べ残しの効果量が増えたりといった利点が得られるため、ランクバトルをする上で理解すべき分野のひとつであると言えるでしょう。
HP調整以外の努力値調整については別の記事で解説しているので、努力値調整や実数値について詳しく知りたい方はそちらを参照してください。
今回はHP調整のうち、特に「16n-1調整」に注目して解説していきたいと思います。
16n-1調整
「16n-1調整」とは、文字通りHP実数値を16の倍数-1にする調整です。175, 191, 207などが、16n-1調整を施された代表的なHP実数値として挙げられますね。
ランクバトルでまま見られるこの調整ですが、なぜわざわざHPにこのような整数調整を施す必要があるのでしょうか?
それは、この16n-1調整には砂嵐や火傷などの定数ダメージを減らすという大きな利点があるためです。
定数ダメージというのは、「最大HPの?分の1のダメージを与える」といった類の効果の総称で、例を挙げると以下のようなダメージが該当します。
効果 | |
---|---|
すなあらし | いわ・じめん・はがねタイプ以外は 毎ターン最大HPの1/16のダメージ |
やけど | 毎ターン最大HPの1/16のダメージ |
どく | 毎ターン最大HPの1/8のダメージ |
もうどく | nターン目に最大HPのn/16のダメージ |
宿り木のタネ | 毎ターン最大HPの1/8のダメージ |
しおづけ | 毎ターン最大HPの1/8のダメージ 鋼・水タイプは1/4のダメージ |
ステルスロック | 繰り出し時に最大HPの1/8のダメージ 岩タイプの相性に準じて倍率が変わる |
上記の効果に見られる「最大HPの1/?のダメージ」という計算は、実は少数点以下切り捨てで行われる仕様になっており、HP実数値を16nから16n-1に減らすことで定数ダメージが繰り上がるのを防ぐことこそが16n-1調整のキモなのです。
どういうことなのか、例を挙げながら詳しく見てみましょう。
HP実数値が192 (16n) のトゲキッスAと、191 (16n-1) のトゲキッスBがいたとします。
HP努力値 | HP実数値 | |
---|---|---|
トゲキッスA | 244 | 191 |
トゲキッスB | 252 | 192 |
この2匹のトゲキッスへの、砂嵐のダメージを計算してみましょう。
191 ÷ 16 = 11.9375
すると、HPが1違うだけで、定数ダメージが繰り上がって1の差が出てくることがわかります。
たった1だけの小さな差に見えますが、砂嵐や火傷など定数ダメージは何ターンも継続して入ることを考えれば見過ごすことはできません。このたった1の差はターンと共に積み重なり、どんどん大きくなってしまうためです。
先程例に上げたトゲキッスたちが、3ターン後にどうなってるのか見てみましょう。
砂ダメ | 0ターン | 1ターン | 2ターン | |
---|---|---|---|---|
トゲキッスA | 11 | 191 | 180 | 169 |
トゲキッスB | 12 | 192 | 180 | 168 |
3ターン砂嵐にさらされ続けると、なんと元々のHPが高いトゲキッスAよりも、HPが低かったトゲキッスBの方がHP残量が多くなってしまいました。
このように16n-1調整には、定数ダメージを減らすことでHPを高く保つ効果があるのです。
16n-1調整の使いどころ
先述の通り、16n-1調整は効率が良い調整のひとつなのですが、全てのポケモンに16n-1調整を施さなければならないわけではありません。
16n-1調整は以下のいずれかの方法で行う必要があります。
・HP実数値を増やし過ぎないことで16n-1にする
16n-1調整はHPが16nを下回っていることが重要な調整です。そのため、例えば16n-5から16n-1調整のためだけにHPを無暗に増やすような調整は不適切な調整だと言えるでしょう。間違った調整をしてしまうと、効率が良いどころか努力値を無駄にしてしまうこともあるので注意しなければなりません。
ということで、ここからは適切な16n-1調整について少し例を挙げながら解説していこうと思います。
間違った16n-1調整
ASベースのドラパルトを使って間違った調整例について見ていきます。
HP | 攻撃 | 防御 | 特攻 | 特防 | 素早さ | |
---|---|---|---|---|---|---|
実数値 | 163 | 172 | 96 | 120 | 95 | 213 |
努力値 | 252 | 4 | 252 |
ドラパルトはHPに努力値を振らない場合、HP実数値は163(16n-13)となっており、16n-1からは程遠い数値になります。このポケモンのHPを16n-1にしようとすると、攻撃や素早さを削ってHPに努力値を回す必要があります。
HP | 攻撃 | 防御 | 特攻 | 特防 | 素早さ | |
---|---|---|---|---|---|---|
実数値 | 175 | 161 | 95 | 120 | 95 | 213 |
努力値 | 92 | 164 | 252 |
攻撃を削ってHPに努力値92を振ることで、HP実数値を16n-1に調整することができました。しかし、この例はあまり良い16n-1調整とは言えません。
なぜあまり良い調整ではないのでしょうか?
2つの調整の砂ダメージを比較しながら考えてみましょう。
175 ÷ 16 = 10.9375
このように、今回の例では16n-1調整をしたかどうかに関わず、毎ターン受ける定数ダメージが同じになっています。
そのため先述したトゲキッスの例とは違い、定数ダメージが何ターン積み重なったとしても2つの調整のHP差はずっと12のままなのです。
砂ダメ | 0ターン | 1ターン | 2ターン | |
---|---|---|---|---|
163ドラパルト | 10 | 163 | 153 | 143 |
175ドラパルト | 10 | 175 | 165 | 155 |
つまり今回の調整によって得られた結果は、HPが12増えた分少し耐久値が上がっただけ、ということになります。これは16n-1調整の「定数ダメージを減らす」という目的には適っていませんよね。
もちろん、HPが12増えることで何らかの攻撃を耐えるようになったのなら有用な調整と言えますが、今回の調整は耐えたい攻撃の目安も立てずにただ悪戯にHPを増やしただけにすぎません。
実際、ミミッキュのじゃれつくを受ける場合について見てみても、56.2%の乱数一発から25%の乱数一発と少し乱数がズレただけで、あまり確実性のある良い耐え調整であるとは言えないでしょう。
さらに、HPに努力値を回した結果ドラパルトの攻撃力は下がってしまい、倒せる範囲が狭くなってしまいました。これでは高速アタッカーとしての役割に支障が出てしまいます。
ということで今回のドラパルトの調整は、多くの場合において「間違った調整」であると言えるでしょう。
なぜ「間違った調整」なのか?
では、トゲキッスの場合とは違いドラパルトの場合が「間違った調整」になってしまう決定的な理由はどこにあるのでしょうか?
結論からまとめてしまうと、ドラパルトの場合はHPを無闇に増やして調整を行っている点と、それによって定数ダメージに全く変化がない点に問題があります。
先ほども説明しましたが、
のようにHPを増やして調整したとしても、砂嵐などの定数ダメージに変化はありません。
対してトゲキッスの場合は、
のようにHPを減らして調整したことで、定数ダメージを減らすことに成功しています。
初めに紹介したとおり、16n-1調整はHPを下げるようにするか、HPを上げ過ぎないようにして16nを下回るようにする必要があります。しかし今回の場合は、もともと16nを下回っているにも関わらず無暗にHPを上げてしまったがために良くない調整になってしまったのです。
適切な16n-1調整の例
次は、ドラパルトを使って適切な16n-1調整の例について見て行きたいと思います。
先ほど「適切な16n-1調整はHPが16nを下回るように調整する」と言いましたが、16nを下回るようにHPを下げるためには、元々HPが16nを上回るくらい高くなっている必要があります。
つまり16n-1調整を行う時は、何らかの耐えたい攻撃があり、それを耐えるために元々HPに努力値が振られている必要があるのです。
ということで、ドラパルトに臆病トゲキッスのマジカルシャイン耐え調整を施す場合を例に挙げて見て行こうと思います。
トゲキッスのマジカルシャインを最高乱数以外耐えるまでHPに努力値を振ったドラパルトは、以下のようになります。
HP | 攻撃 | 防御 | 特攻 | 特防 | 素早さ | |
---|---|---|---|---|---|---|
実数値 | 193 | 164 | 95 | 120 | 95 | 162 |
努力値 | 236 |
しかしこれではHP実数値が16n+1になっており16nを上回ってしまっているため、HPを2下げて16n-1に調整し、余った努力値を特防に回してみます。
HP | 攻撃 | 防御 | 特攻 | 特防 | 素早さ | |
---|---|---|---|---|---|---|
実数値 | 191 | 164 | 95 | 120 | 97 | 162 |
努力値 | 220 | 12 |
すると、トゲキッスのマジカルシャインを最高乱数以外耐えする耐久を維持しつつ、HP実数値を16n-1にすることができました。調整前と比較して定数ダメージも減っており、16n-1調整の目的が確かに達成されていることがわかります。
まとめ
これを踏まえて、「適切な16n-1調整の条件」についてまとめると、以下のようになります。
②HPが16nを下回るように減らすことで
③定数ダメージを減らす
HPを下げた分は防御や特防に回すことで、耐えたい攻撃はそのまま耐えることができます。ドラパルトの例では、HPを下げた分特防を上げることでトゲキッスのマジカルシャインをしっかり耐えられていますね。
特に、①を無視してむやみやたらにHPを上げて16n-1調整をしてしまうのはあまり良くないので、しっかり条件を確認して適切な16n-1調整を行うようにしましょう。
その他のHP調整
今回は16n-1調整を中心に解説してきましたが、その他にもHP実数値を何かの倍数を基準として調節するHP調整が多くあります。
それらの調整に関する詳細な解説は以下の記事で紹介しているので、良ければそちらを参考にしてください。
今回はその内のいくつかの例を紹介したいと思います。16n-1調整と同じく使いどころが限られている調整も多いので、適切な調整なのかをしっかり見極めてから使うようにしましょう。
2n-1調整(奇数調整)
HPを奇数にする調整です。
あまり耐久に努力値を割かないASやCSのポケモンでも、残った努力値4をHPに振るかどうかを選択することで行うことができます。
この調整には色々な利点があるのですが、一番の利点は弱点技を耐えやすくなることでしょうか。ダメージ計算の仕様上、弱点技のダメージは基本的に偶数になるので、HP実数値を奇数にしておくとHPを1残して耐える確率が上がります。
また、岩が4倍弱点のポケモンへのステルスロックのダメージや、飛び膝蹴りを外した時のダメージ、呪いの反動ダメージなど最大HPの1/2のダメージを受ける定数ダメージを2回食らってもHPが1残るという利点もあります。
8n-1調整
HPを8の倍数-1にする調整です。
16n-1調整は8n-1調整も兼ねているのですが、ここでは16n-9(8n-1だが16n-1ではない)調整について解説していきます。
最大HPの1/16のダメージを受ける砂嵐や火傷などに対しては効力が薄いのですが、毒ダメージやしおづけのダメージなど、最大HPの1/8のダメージを受ける定数ダメージに対して効率が良い調整になっています。
16n-1調整よりも効率が劣るのですが、16n-1までHPを上げるための努力値が足りない場合などは8n-1で妥協すると良いでしょう。
10n-1調整
HPを10の倍数-1にする調整です。
命の珠を持ったポケモンに使われます。
命の珠を持ったポケモンは攻撃するたびに最大HPの1/10の定数ダメージを受けるので、HPを10n-1にしておくとHPあたりの命の珠ダメージが小さくなります。
しかし、この調整も16n-1調整と同様にむやみやたらに施して良い調整ではありません。命の珠を持たせたポケモンに耐久調整を施したい時に、HPを減らして使用しましょう。
16n+1調整
HPを16の倍数+1にする調整です。
16n-1調整とは反対に、定数ダメージが大きくなる調整になっています。
定数ダメージは大きくなってしまうのですが、その代わりに食べ残し等の回復量も大きくなります。食べ残しや黒いヘドロなど、毎ターン最大HPの1/16を回復する効果があるアイテムを持ったポケモンに施すようにしましょう。
この調整に関する注意点なのですが、この調整は16nを上回っていることが重要な調整なので、16n-1調整とは逆に16nを上回るようにHPを増やして行うのが適切になります。無暗にHPを減らして16n+1にしてしまわないように注意しましょう。
総括
紹介した以外にも様々なHP調整がありますが、今回はあくまでも「適切なHP調整の紹介」ということで、その他の調整の紹介はここまでにしたいと思います。
HP調整は効率的な調整ではありますが、絶対に施さなければならないような調整ではありません。余裕があれば施せば良い程度に考えておけば良いでしょう。理解が不十分なまま無暗に施したり、努力値を無駄に使ってしまったりすることがないように注意してください。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。